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嫌なことは忘れる!?
皆さんは、辛いことや悲しいことがあった時、どうやって乗り越えていますか?
「その事についてはなるべく考えない。」
「たくさん食べて忘れる!」
「ヤケ酒をする。」
それも一つの方法かもしれません。でもそれで消えていく心の痛みもありまするが、放っておくことで余計人生が難しくしなってしまう心の痛みも多いんです。
女性受刑者のための読書プログラム
ノートルダム清心女子大学の教授、村中李衣(りえ)先生は、12年前から刑務所に服役する女性受刑者に向けて、読書療法のプログラムを実践してこられました。
参加する女性受刑者は一緒に暮らすことの叶わないは我が子のために、自分の好きな絵本を一冊選んで、それを仲間とともに2ヶ月かけて練習し録音して、我が子に届けるんです。
プログラム参加した人たちは、絵本を読み進める中で、自分にはどうしても読めない箇所や、主人公がなぜそう言うのかわからない箇所にぶつかるそうです。
そんな時に仲間と対話をし、何度も励まされるうちに、それまでは自分が無意識の中に抑えこんでいた様々な思いが湧き上がってくると言います。
そしてそれを繰り返すうちに気持ちの整理が進んで、心の痛みから解放されていくのだと言います。
生身の自分に、絵本の言葉が食い込んでくる
「もうこんな悲しみに立ち止まっているわけにはいかない。」と帯に書かれた本の中には、村上先生のこんな言葉があります。
「大事な変化のきっかけは、声を出して絵本を読むうちに「あれ?」と何か引っ掛かりを覚えるということ。」
「最初は子供に聞いてもらうために絵本に書いてある文字を間違えずに、すらすら読むことだけを考えていたのに、あるとき、ふっと生身の自分に絵本の言葉や絵が食い込んでくる瞬間があるのです。」
子供たちと自分の思い出がいっぱい入っていた絵本
ある女性受刑者は覚醒剤所持で服役をし、もう2年以上子供と離れて暮らしていました。
「残してきた子供たちに、できることをしてあげたい。」という思いで70冊の中から彼女が選んだのは「わたしがあかちゃんだったとき」という本でした。
この本を手にした時彼女は、「これ!」と思ったそうです。それは絵本の中に、自分が子どもにしてあげたかったこと、子供たちと自分の思い出がいっぱい入っていたからです。
手にはいらなかったものを子供にはあげたかった
彼女自身早くに母親を亡くし、親戚の家で育ちました。
家に友達を呼びたくても「そんなことを言ってはいけない。」と思い子供ながらに遠慮をし、我慢してきたといいます。
誕生日を祝ってもったことのなかった彼女は、暖かい家庭をつくりたいと早く結婚し、良い母親になるために一生懸命子供を育てました。
自分にはなかったものを子供にはあげたいと、誕生日には風船で部屋中をいっぱいにして、ケーキも手作りしました。
でも結婚生活がうまくいかなくなり、離婚をしたことがきっかけで彼女の生活はすさんでいきました。そして薬物にのめり込むようになりました。
暖かい家庭という理想とは程遠い、薬物をする自分の姿を見せたくなくて「あっちで遊びなさい!」と子供を遠ざけるようになり、子供が甘えてきても、返してあげることはできなかったといいます。
「ママ、私のこと好き?」
彼女にはどうしても感情が込められないシーンがありました。でも仲間との対話を通して「自分がちゃんと子供の気持ちに向き合ってこなかったから、気持ちがこめられないのだ。」とわかったと言います。
「ママ、私のこと好き?」と子供が聞くのは「好きだよ!」という言葉が聞きたくて、答えはもうわかってるのに聞いてくるのだと。
でも自分は、自分が欲しかった誕生日などのイベントにばかりこだわって、子供が本当に一番欲しい言葉は返せてなかった。
みんなが普通にしていることをしたくて、すごく頑張ってきたけれど、背伸びばかりで、母親としての私の中身は空っぽだったなと考えるようになったといいます。
「今までは自分の中で振り返ることは避けていて、なるべく考えないようにしてきたけど、これからはちゃんと考えなくちゃ、変わらなくちゃ。」と彼女は考えるように変わったのだそうです。
心を見つめる勇気を出せば人生は本当に変わる!
12年間に行われたこのプログラムに参加した彼女のような女性は、山口刑務所内に73人いて、そのうち57名の方は現在も再犯することなく社会復帰できているといいます。これは驚くべき数字です。
自分の心を見つめる勇気を出せば、人間は本当に変わることができるんですね!
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著者 心理カウンセラー/講演家 かなう美保
12歳までの記憶を失う体験をする。生まれつき重い障害の娘を自宅で看護し、自らの手の中で天国に送った。中学生の息子の頭にこぶし大の腫瘍ができ、頭蓋骨が3㎝の半円状に溶ける経験をした。発達障害が理由で先生からいじめられ不登校から引きこもりになった息子の話を聞き寄り添い、やがて息子は自ら勉強を始め大学に入学、社会復帰を果たした。
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