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食べものがあるのに、食べられない
皆さんは、摂食障害について、お聞きになったことがありますか?
「目の前に食べものがあるのに、食べられなくて苦しむ。」という症状は、よく知らない人にとっては、不可解に感じるかもしれません。
今回は、摂食障害の自助グループNABAの共同代表鶴田桃ヱさんのお話しから、摂食障害や、その以外の心疾患の意味について考えたいと思います。
体重の4割を失う
鶴田さんの摂食障害は15歳の時に始まり、大学生の頃には体重が30kgを切ってしまったそうです。
30㎏と言えば小学校3年生の体重です。
摂食障害は、自分の体重から2割以上減ると、多臓器障害などを起こす可能性があり、命に係わると言われています。
すでに4割近く減少していた鶴田さんは、入院することになりました。
拒食症から、過食、そして過食嘔吐症へ
病院からの退院後は、症状が過食や、食べては吐くをくりかえす過食嘔吐症に移行していきました。
今度は、体重が増えてしまう恐怖に、気が狂いそうになり、どんどん精神的に追い詰められていったそうです。
こんな風に摂食障害は、常に自分を激しく責め続ける苦しい病気なんです。
この症状さえなければ、まともに生きられるはず
この時期の鶴田さんは「この症状が私の生きづらさの原因。これさえなければ、まともに生きられるのに。」と当時は信じていたそうです。
その後症状が収まって一般企業での就職を果たした鶴田さんは、
「これまでの摂食障害という汚点を葬りさって、新しく人生を生き直そう!」と決心して一生懸命に働いたといいます。
でも少しずつ職場で評価をされるようになっていったころ、再び症状がぶり返ししまい、結局3年間で退職せざる負えなくなりました。
仕事もできなくなって希望を失い、入退院を繰り返す日々、ぶつける場所のない行き場のない気持ちから、家で暴れるようになり、家族も疲弊していったといいます。
仲間との出会い
そんなどん底の時に、摂食障害の自助グループNABAに出会いました。
NABAで仲間たちの話を聞き、自分も人生を語る中で、少しずつ、つらい摂食障害の症状は、自分の心が何を伝えようとしていたのだと見えてきたんです。
鶴田さんは幼い頃から「親や周りの期待にこたえなければ。」と自分を目いっぱい膨らませて、頑張って生きてきたといいます。
そして自分自身を押し殺す無理な生き方が限界に達した時、自分を守るために摂食障害の症状が訪れたのだと理解できました。
この症状があったから、生き延びて来られた
つらい症状は、「こんな生き方は、もう続けられない!」という心の叫びだったということ。
また、この症状があったから、虚しさや寂しさをなんとか麻痺させて、生き延びて来られたのだと分かったんです。
摂食障害になったあと病気になったのではなく、症状が出る前の生き方の方がずっと病的だったのだと気づいたんです。
不安や焦りや怒りを、過食することでなんとか落ち着かせ、自分の食欲を徹底的に制限する拒食を通して、失われていた自分を力を命をかけて保っていたんです。
実は、これは摂食障害に限ったことではなくて、あらゆる依存症、そして心の症状も同じです。
自分を取り戻すに連れて、失われていた記憶も取り戻し、それまでは感じることのできなかった深い悲しみも感じられるようになっていきました。
そんな自分の歩んできた人生を理解するに連れて「こんなに傷ついてきたのだから、生きのびるには摂食障害になるよりなかった。」とわかったんです。
「生きることが怖かった。」
「食べるのが怖い。」というのは生きることが怖かったから。太ることが耐えられなかったのは、自分の存在が耐えられなかったから。
「何を食べていいかわからない。」というのは、どう生きればいいのかわからないという心の叫びだったんです。
すべての心の症状には、必ず理由があって、鶴田さんにとってそれは一言でいうなら、
「こんな自分では、受け入れてなんてもらえない、生きる価値のない自分。」という自分自身への差別だったといいます。
「死ぬぐらいなら、その症状を大切にしていってほしい。」と鶴田さんはいいます。
そうですよね。
そのつらい症状は、命がけであなたを守ってくれているんですから…
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著者 心理カウンセラー/講演家 かなう美保
12歳までの記憶を失う体験をする。重い障害の娘を自宅で看護し、自らの手の中で天国に送った。息子の頭にこぶし大の腫瘍ができ、頭蓋骨が3㎝の半円状に溶ける経験をした。特別養子縁組により血のつながらない子を我が子として育てている。発達障害のため担任からいじめられ不登校からひきこもりになった息子に寄り添い、やがて息子は大学に入学、現在は子供の気持ちがわかる小学校の先生として働いている。
詳しいことは グレイスカウンセリング https://kanaumiho.com/
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