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あなたは、上手に負けられますか?

皆さんは上手に負けることができるタイプですか?

人間関係や夫婦の間で意見の食い違いがあった時、お互いに自分の正しさを主張しているだけなら、話は平行線になってまとまりません。

あえて一歩引いて譲った方が、相手だけでなく、自分にとってもプラスになることも多いですよね。

それがわかっていても、負けることは難しいと感じる方は多いようです。

絶対にありえないアドバイス

ある老婦人がこんな話をしてくれました。

以前その老婦人は、夫婦関係がこじれてしまい、何をやっても全然うまくいかず、もう離婚しかないと考えていた時期があったそうです。

でも、もし何か離婚を回避する方法があるならばと、最後の望みを託してある著名な心理カウンセラーに相談をしました。

するとそのカウンセラーは、じっくりと話を聞いた後、彼女にこんなアドバイスをしたそうです。

「あなたはご主人に、すごく腹を立てますよね。当然のことです。」

「でもご主人が、家族のために仕事をしてることには感謝できますか?」

「もしそうなら、ご主人が毎朝、出かける時と帰ってきた時、あなたが玄関まで出て感謝を伝えてあげてください。」

これは、手厳しいアドバイスですよね。

離婚を考えるぐらい腹を立てていたその女性にとって、自分が玄関に迎えに出るということは、自分の負けを意味していました。

でも彼女は絶対にやりたくないそのことを、断腸の思いで自分の幸せのために実行したんです。

するとしばらくして、夫を出迎えることがあまり苦しくなくできるようになってきたころ

ある日を境にご主人の態度がガラリと変わって、突然優しくなったというんです。

そのとき以来、このご夫婦は、お互いを思いやるすごく仲のいい夫婦になりました。

同じ方法が全ての方に当てはまるわけではありませんが、

もしあの時彼女が、あえて自分が負けることを選ばなかったら、このご夫婦はいったいどうなっていたんでしょう?

「私を、いったいなんだと思ってんの!」

でもどうして私たちは、相手に負けることがそんなに難しいんでしょう?

そこには自尊心が関係しています。

負けるということは、自分ではなく相手が正しかったと認めることですよね。

私たちが上手に負けるのが難しいのは、自分の正しさにこだわるからです。

でもどうして正しいことはそんなに大事なんでしょう?

私たちが腹を立ててる時の気持ちを一言で言い表すなら「この私を、いったいなんだと思ってんの!」という感じじゃないでしょうか。

つまり自分をちゃんと扱わってくれなかった、邪険にした、バカにした、そういうことに怒っているんです。

また、気持ちを理解してくれていないと感じたり、得られるはずのサポートがなくて、期待が裏切られた時、私たちは相手に腹を立て、それが上手に負けることが難しくさせます。

当然のことです。

でももう皆さんもお分かりの通り、勝ちにこだわれば、だいたい事態は悪くなります

上手に負けるために、俯瞰して考える

では、どうしたら上手に負けられるようになるんでしょう?

上手に負けられる人というのは、気持ちの切り替えが上手な人です。

「このまま意地をはり続けても、関係が悪くなるだけだから何の得もない。」と一歩引いて俯瞰してみる視点を持つことが、上手に負けられるための第一歩です。

ぶつかる理由は、同じ器だから

でもそれがわかっていても、自分が負けてまで相手を勝たせるのは、悔しくてできないという方もいらっしゃいます。

なぜ悔しいんでしょう?

それはあなたが傷ついているからです。

相手があなたの気持ちを理解してくれなかったのかもしれません。

それなら、悔しくて負ける気になれないのは当然だし、何も間違っていません。

だけど問題は、相手もあなたに、理解してほしくて、受け入れてほしいのかもしれないということなんです。

私たちは、自分と同じぐらいの器の大きさの人とぶつかります。

もしどちらかに余裕があって、引くことができれば衝突になりません。

結婚相手でも、相手が自分より器の大きい人だったら、コンプレックス刺激されて、一緒にいても落ち着かないものです。

だから私たちは、自分とちゃんと釣り合いの取れた人を選ぶんです。

それが仇になります。

自分の器がいっぱいいっぱいの時は、相手も器もいっぱいいっぱいになっているということです。

だから、問題を解決するには、どちらか片方がまず先に、自分の器を広げるしかないんです。

あの老婦人も、出たくない玄関に出て行くことで、彼女の幸せを入れる器が大きくなったんです。

たとえ正論で相手に勝っても、関係が壊れてしまえば、自分の将来にはマイナスなり、結局は大きく負けたのと同じです。

だからこそ、気持ちを切り替えて、自分の幸せのためと思って動いていきたいですよね。

その人の器の大きさは、勝った時より、負けた時にこそ計られるものだからです。

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著者 心理カウンセラー/講演家 かなう美保  
12歳までの記憶を失う体験をする。重い障害の娘を自宅で看護し、自らの手の中で天国に送った。息子の頭にこぶし大の腫瘍ができ、頭蓋骨が3㎝の半円状に溶ける経験をした。特別養子縁組により血のつながらない子を我が子として育てている。発達障害のため担任からいじめられ不登校からひきこもりになった息子に寄り添い、やがて息子は大学に入学、現在は子供の気持ちがわかる小学校の先生として働いている。 

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